お正月に実家に帰って雪が積もっていたので、冷えていないワインを雪の中に突っ込んだらキンキンになりました。
雪国すげえ。こんにちは。渡邉司です。
これは雪国あるあるかと思うのですが、実際にやってみたら感動するもんですね。またお正月に帰ったらやってみよ。
さて、僕みたいなワインを扱う仕事をしている以上、「売る」という行為からは逃れられません。
というか大体の仕事は「売る」という行為から逃げることはできませんよね。お商売ですからね。
僕でいえばワインをはじめとする飲料となるのですが、グラスワインも、ボトルも、メニューに載っている以上それを選んでもらわなければ始まらないわけです。
それでも現場に立ち続ける中で、この「売る」という言葉にずっと小さな違和感を感じていました。
「売ろう」とすると、会話がズレていく
売ろうと意識した瞬間、会話の重心が少しだけ前に出ます。
価格の説明が早くなる。産地や品種の話が長くなる。「間違えない提案」をしようとする。
どれも間違いではありません。むしろ、仕事としては正しい。
「このワインを売るためにあの料理を提案しよう」とか「今の季節の料理だとこのワインを合わせる方がいいよね」
そういうことを常に考えています。なので売ろうとする意識自体は全く問題ない…むしろ正解だと思います。
でも、その結果としてお客様との距離がほんの少しだけ縮まらないことがあります。
お客様が選んでいるようで実は僕らに選ばされている感覚。自然に勧めようとすればするほどギクシャクしてしまう。
その違和感に、何度も立ち止まりました。
任せてもらう時、ワインの話は減っている
不思議なことに、「今日はお任せで」と言われる時ワインの話はほとんどしていません。
そんな時に僕が思うのは
・今日はどんな集まりなのか。
・どれくらいゆっくりしたいのか、それとも早くスパッと次にいきたい流れなのか。
・強い印象と穏やかな印象、どちらがいいか。ゲストはどれくらい飲めるのか、飲み慣れているのか。
どちらかというと、時間の使い方を見ています。
料理のテンポ。会話のリズム。グラスの中の液体が減る速度。
情報を足すのではなく、観察を重ねていく感じ。
その先に、「任せる」という選択肢が生まれるのだと思います。
「おすすめ」は、提案ではなく確認作業
そんな僕でも「おすすめはありますか?」というお客様からの質問に対してすぐにワイン名を返していた頃がありました。
試飲会やインポーターさんからの紹介で美味しいワインを見つけるとどうしてもワインの名前を出したくなるのは仕方ないと思いつつ
お客様が求めるのは味やブドウの品種、今日食べている料理に合うかどうかです。あと予算もね。
常連の方ならある程度の好みは把握しているのでワイン名で答えても良いと思うのですが、そうでない方にいきなりワインの名前を言ったところで伝わるわけがありません。
お客様とのコミュニケーションが成り立たないので、当然ワインも売れませんよね。
その経験もあって、今は少しだけ立ち止まります。
スパークリング、赤か白かはもちろんのこと、軽めかしっかりか、も当然ですが
今の気分。今日の目的。そのテーブルの空気。
中でも僕はレストランのソムリエですから、「付いていけないお客様がいないようにする」ということも大事にしています。
ワインに詳しいお客様はお話好きな方が多いですから、ワインの話がメインになってしまう時もあります。
ですが、ワインがわからない、勉強はしているけど詳しくはない。という方にはその時間が正直楽しい時間であるかどうかはわかりませんよね。
なのでそれら全てを確認した上で「この流れなら、これでいいですね」と、静かにお勧めする。
お勧めとは、こちらの正解を提示することではなく、
一緒に確認する作業であり、場を整えてあげることも必要だと僕は思います。
売上は、後から結果としてついてくる
「今日はいいボトルが出た」「単価が上がった」そういう話は、あまり大きな意味を持ちません。
いや、まあ大きな意味を持つのですが。笑
この前150万円のワインを売った時とかニヤニヤしちゃいましたもんね。笑
そんなことは置いておいて。任せてもらえるようになると結果として数字は変わっていきます。
無理に高いものを勧めなくても、自然とお客様の選択肢の幅が広がって様々なオーダーが入るようになります。
それは、売れたから信頼が生まれたのではなく、信頼が先にあったというだけの話です。
「渡邉君に選んでもらおう」「あれ、今日シェフソムリエいないの?」「なべちゃーんワイン選んでー!」なんて言われたら最高です。
大体何を選んでも喜んでもらえるし、会話の中でワインに詳しくない人がいても「今日はワイン勉強中の人連れてきているから教えてあげてよ」と言ってもらえます。
その信頼関係こそが後々売り上げに反映されてくるのです。そして自分のお客様になるのです。
任せてもらう、という関係性
売ることは仕事です。任せてもらうことは関係性です。
前者は一度きりでも成立しますが、後者は積み重ねが必要です。
しかもその積み重ねは実績も伴わないといけません。誰が見てもわかるような結果を残さないと見てもらえません。
名前を覚えてもらう前に、安心感を覚えてもらう…いや、同時進行かしら。
でも新人の名前を覚えてくれるなんてよほどできた人か常連さんくらいですかね。
説明を覚えられる前に、サービスをしていて心地よさが残る。気持ちよく飲める、食事ができる。
その結果として、「またお願いしたい」と思ってもらえる。
それが、自分が目指している立ち位置です。
悔しいことに僕は年齢よりも相当若く見られますから、「君、ワインわかる?大丈夫?」とソムリエバッジをつけていても聞かれます。
名刺を渡すと一応それなりの役職が書いてあることが多いので、「え、マジで」となるのですが。今は自分から名刺も渡しに行かなくなりましたね。「僕の名刺が欲しければ言ってください」モードにしています。接待は別ですが。
昔は腹が立って「それなりに」と生意気な返し方をしていましたが、今は特に何も言いません。
いやまあ言うんですけどね「業務上必要な知識は持ってます。てへ。」みたいな感じ。笑
でもサーヴの仕方や選び方、薦め方を見れば普通の人は「この人知ってるな」とわかってもらえますからね。
まとめ 選んでもらうより、委ねてもらう
ワインを売っているつもりはありません。
ただ、その時間に合った一杯を一緒に選んでいるだけです。
昔お世話になった仕事先のオーナーさんが「俺たちの仕事はタイムクリエイターだからね」と言っていました。
なるほど、飲食を楽しんでくれる人の時間を僕らは作っているんだ。と納得した記憶があります。
僕らプロに委ねて貰えば楽しく、美味しい時間をクリエイトしてあげますよ。
なんて偉そうなことは言えませんが、僕らに委ねて貰えばもしかしたらいつもの時間がより楽しく思えるかもしれませんね。
お客様とそんな関係性を一つずつ積み重ねていけたらと思います。