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ワインリストへの考え方

どうもサービスマン渡邉司です。

実は一番初めにこの記事を書いたのは2020年の…いつだったは覚えていませんが(多分夏くらいだった気がする)

そのおかげでPodcastに出演することができたり、現場に立っている人以外のワインに関わる人と出会えたり、僕という人を知ってもらえたお大きなきっかけとなったのでとても大切にしている記事の一つなんです。

で、実はその時はソムリエ資格も持っていなかったので、どうしても説得力に欠けると言いますか、「ソムリエ持っていないお前が何を言ってるの?」と言われたりもしたので

ソムリエ資格を取った今改めてこの渡邉司的ワインリストの作り方を書いてみようじゃないか!

と思ったわけです。

先ほども書きましたが、この記事がきっかけでPodcastへの出演や自分のPodcast(なかなか更新しないですみません)も始めることになった非常に重要なこの記事です。が、これと言って特別なことは書いていません。

当然数字とかは計算しますし、飲んだお客様の先を考えたりして作成はしてきましたが、基本的には普通のリストを作成してきたつもりです。

普段は「自分はサービスマンだ」「まずはサービスが大事だ」と言っていますが、やはり一般的な知名度で見てみますと

サービスマンよりもソムリエというワードの方が広いネットの海原でも検索ワードで引っかかりやすいので使っています。

さて、そんなワインリストへの考え方ですが、まあ普通です。普通のこと考えて作成しているだけです。

発注に関しても卸業者のリストを毎日見るとか、特価が出ているかを探すみたいな感じです。

懇意にしているインポーターの方に多く使うからその分安くしてよ。なんて交渉をたま〜にするくらいですかね。

本当に特別なことはしていません。でも多分人よりちょっとだけ違うかな?点というのはあります。

では、書いていきましょう。

自分が好きなワインはほぼ使いません。

いきなりですが、結構衝撃だと思うんですよねこれを聞いた人は。

だってソムリエって自分が好きなワインを使うんじゃないの?

フランスワインが好きな人は他の国のワインをディスって使わないとか自分色に染めたいやつってあるじゃん?

自分の自己顕示欲と承認欲求を満たしてお客様に「〇〇さん、すごいですね」って言われたいやつばっかりじゃないの?

こんなこと思いません?正直言って僕はそう思ってました。実際年齢関係なくそういうソムリエを多く見てきましたしね。

間違ってないんですけどね、だって頑張って資格を取って「そろそろ君もワインを選んでみるかい?」とか言われたらそりゃあ張り切りますよ。

ワインについて色々と書いてある本を買って学び、少ない時間を見つけて試飲会に行き、少ない給料でワインを買って飲んで、ご飯を食べに行ったりするわけです。

そして高い受験料を払って試験を受け、晴れて合格してソムリエとなる。だから自分が好きなワインが多くなるのは当然のことだと思います。僕も昔はそうでした。

そっちの方が自信を持って売ることができるのも事実ですし、それを飲んだお客様が「美味しいですね」なんて言ってくれたらそりゃあねぇ、嬉しいもんですよ。

ですが、それだけではいけないと僕は思います。特にワインの値段が毎月のように上がっている昨今、頭を使わないと利益が出るリストは作成できません。

それはワインリストだけでなくドリンクメニューも基本的には同じ考えになるんですけどね。

その考えの一つが自分が好きなワインはほぼ使いません。

となるのです。びっくりすると思うのですが、本当にそうなのです。

「ほぼ」というのがミソなんですけどね。

もちろんこれにはきちんとした理由があります。

さて、現在飲食業に従事している人たち(主にワインに携わる人)は自分がお店のワインリストを作ることを想像してみてください。

「○○さんワインリスト作ってください」と言われたらあなたはどんなワインを選びますか?

ワインにはフランス、イタリア、スペイン、カリフォルニア、南アフリカ、日本などなどたくさんの国があって

ボルドー、ブルゴーニュ、トスカーナなど有名な場所のワインを多くしよう。

とか

グラスワインで常にシャンパーニュを用意しよう。

とか

グラスワインで10種類以上提供したい。

とか

色々夢が膨らむわけです。やりたいことはたくさんあります。そのために勉強をしてきたんですから。

僕は昔ロゼワインだけでフレンチのフルコースのペアリングをしたこともありました。

グラスワインリストにオレンジワインを常に5種類用意することもありました。

普通に考えたらおかしなことです。多分ほとんどの人が考えないでしょう。

どんな青写真を描いたとしても、きちんとワインを売ることができないとロス(廃棄)が増えてしまいます。

ロスが増える=お金を捨てることなので、いきなりやりたいことを全てしてしまうとどうなるか…想像に容易いですよね。

とは言うものの、やはり自分の色を出したいと思うのが人間の性。期待されたら応えたい。褒められたい。そりゃそうだ。

任してもらうと言うことは期待の表れでもありますからね。

そりゃあ気合も入ります。当然です。

ですが、僕個人としては様々なタイプのお店でリストを作った経験から言うと

・自分の好みを3割くらいに抑えて

・競合他社とのバランスそして来店を想定するお客様のレベルに合わせて7割

という比率が良いリストだと思っています。

ここで言う良いリストというのはお客様を喜ばせるリストではありません。

お客様を喜ばせるのは当然です。それは大前提です。

僕が思う良いリストというのは

きちんと会社にお金が入るリスト

だと思っています。

大事なんですよ。お金が入るリスト。

自分の好きなワインが使いたいなら自分の金でやれ

いくらリストを任されたと言っても本当に好き勝手やったらとんでもないことになります。

キャッシュがあり余っているなら別にどうでもいいですが、普通ならそんなことは怖くてできません。

というか本当に好き勝手やりたいなら自分のお店を開いて、自分のお金でやれ。と。

基本的にはソムリエもサービスマンも雇われて働いている人が多いわけで、人のお金で物を仕入れたりしているので無駄にして良いことなんて本当ならあるわけがないのです。

それでも自分が好きなものだけは大事にして他を疎かにするスタッフが多いこと多いこと。

だから僕らの業界はバカでも出来るって言われるんです。本当ならバカには出来ないんですよこの仕事。

どうしてそんな人が多いのか?簡潔に言うと他人事だし、他人の店だから好き勝手できるわけです。

手を抜いて仕事をしてもある程度給料は保証されていますし、嫌なら他の店だってすぐ見つかりますからね。どこも人手不足だし。

ですがこれが自分のお店ならどうでしょう?ワインの一滴も無駄にはしたくないですし、紙一枚、製氷機の氷一個すら無駄にはできないと思うはずです。

自分のお店開いて好き勝手やれと言っておきながら無駄にはできないなんておかしいと思うかもしれませんが、一度独立したらこの感覚はわかるはずです。

1円ですら無駄にはしたくないのです。

全てのことに経費がかかっていること、そして「もったいない」ということを念頭に入れていかなければならないのです。

ワイン1本から得ることのできる量、売り上げ、原価、消費税込みなのか抜きなのか。サービス料は含まれるのか。グラス代も含むのかなどなど。

売り方はどうするのか、ワイン単体で売るのか料理と合わせて売るのか、どういうお客様に売るのかなどなど。

考えることが山ほどあるし、常に頭の中で算盤を弾かなくてはいけません。ソムリエもサービスマンも数字に強くならなくてはいけないのです。

 

一番大切なことはお客様を満足させること

目にみえるお金もそうですが、一番大切なのはお客様に値段以上の価値を与えられているのかどうか。

来てくれるお客様全員を満足させる。至極当然のことです。

100点は無理?わかります。1回の営業だけ100点ならできますが、営業している日全部100点なんて日は難しいのは当然です。

ですが、出来ないのは仕方ないですが目指さないのはおかしな話で、そんな意識の低い人がいるお店はさっさと辞めましょう。

自分のことを気に入っているお客様だけ相手にするチープなサービスをする人は淘汰されていきます。

そして料理と合っているか。生産者がどんな思いで造っているのか。

過去にいたお店ですが、レベルがどんどん落ちているのに意固地になって変えれないお店もたくさんありました。お店というかそこのソムリエですかね。

ワインのことが詳しいのはソムリエとして当然のこと。ですがソムリエ業務以外に必要なことの方が多いんです。店舗の運営というものは。

細かいことですがきちんと飲料の数字が見れて、利益がどれだけ出るのかを把握することもそうだし、しっかりとスタッフへの教育もする。

もちろん他の飲料の管理や、しっかりとお客様をお店に捕まえるということができていないと、いくら「任せるよ」と言われても自由にやらせてもらえません。

ソムリエである前にサービスマン、お店のスタッフ、会社組織の一員ですからね。

組織にお金を落とす。大事です。

そんな僕が銀座や原宿、青山などのいわゆるお金を持っている人が集まりやすいところでリストを作るときに心がけていたのは

ワイナリーのブランドや世間での評価、認知度などを中心にリスト(オーパスワンとか5大シャトーとか有名どころ)を作っていました。

もちろん有名だから良い悪いではなくお客様自身が喜ぶリストを作ることが第一。自然派のワインが苦手な人にそのワインをオススメしても意味がありません。

これでもし僕が有名なソムリエならもしかしたら違うアプローチができたかもしれません。というかできたでしょう。

「人」に会いに行くのが一つの楽しみというのは非常に大きな強みです。と言うかこれが全てです。

ですが僕は有名なソムリエでもなんでもないので、いきなり司さんがいうなら飲んでみましょう。

司さんに会いに行こうなんて人がまずいないのでね。

地道な営業活動をしていればファンは後々増えます。そうやって自分のファンが増えてくれればいいんです。千里の道も一歩から。

やり方を間違えたら即落ちますけどね。初心忘るべからず。僕も気をつけなければ。

話は戻りまして、土地(銀座とか西麻布とか青山とか)でお金が取れる場所以外のところではコスパの良いもの。

特にプロの世界では有名だけど一般の方にはあまり知られていないリストを中心に作っています。

もちろん初期の立ち上げから作るとなると周辺のお店にご飯を食べに行ってチェックできるので値段とか諸々決めやすく立ち上げと言うのは意外と作りやすくて良いのですが

他のお店に移り、前にいたソムリエから引き継ぐとまあすごいんですよ。色々すごい。

どうしてフランス料理のお店でイタリアワインの方が多いの?なんてこともありましたし

逆も然りでイタリア料理のお店なのにフランスワインばっかりとかもありましたし。

とにかく高いものしか置いていないお店とかもありました。こんなの誰が飲むんや。とか、棚卸しの表にも載っていないぞこれ…みたいな。

きっとボルドーが好きなんだな。とか

あーバローロ好きなのね〜。とか

おいおいどうしてこんなにスペインワインばかりやねん!とか

見ててすごく面白いんですよね〜その時その時のソムリエ達の色が出てて。

整理整頓するのはめんどくさいですが、ソムリエの頭の中が見えるようで非常に興味深い。

あと大変だったのが大きなお店ほどいろんな会社との絡みが大変でなかなか思うように作ることはできません。

この会社のワインを使わなきゃいけないとか、お店がオープンした時からの付き合いとか、シェフと付き合いが長いからとかとか。

が、そこは腕の見せ所。先にいるスタッフに話を聞いたり、以前のリストを見せてもらったりとまずは情報収集。

さあ自分好みにリストを作るぞ!と意気込み自分色に染めたいのもわかります。

ですが一旦ストップ!ちょっと待ってください。

わからなくもないのですが、まずは自分の色は隠しておきましょう。まずはね。

先ほども書いた通りどうしてもソムリエが好きなものが多めになってしまうんですよね。

ボルドーが好きならボルドーが中心、イタリアが好きならイタリアが中心。

新世界が好きなら新世界…。いや、いいんですよ。

そりゃソムリエになってワインリスト作っていいよって言われたら自分の世界観を反映させたいのは良くわかります。

僕は日本ワインだけでペアリングやってましたから。シャンパンだけのペアリングとかね。

そのためにたくさん自分の時間とお金を使って勉強するわけです。ソムリエ試験だって受験料はばかになりません。

が、ここに落とし穴があります。辛辣なことを言いますが

お客様はワインリストに興味があってもソムリエには基本興味がないんですよね。

悲しいですけどこれが事実です。先ほども書きましたが、有名なソムリエでしたら話は変わりますけどね。

ワインリストに興味があって、作った人には興味ないんですよね。

継続して働き、お客様がお店に通い続けるうちにそのスタッフの顔を覚えたりして興味を持ってもらうのです。

まずはお店に定着させる。そしてしっかりと水物で利益を上げれる仕組みを作るのが一番大切だと個人的には思っています。

手前味噌ですが、僕はとあるレストランにいた時、飲料の売り上げを前年比150%を半年間続けました。

そのまま他のお店に移るまでずっと150%付近を続けていたので、これは大きな自信になりました。

半年間することも結構大変です。結構というかめちゃくちゃ大変です。

ですが継続することはもっと大変で、まだ若いスタッフにも、僕より在籍の長いスタッフにもあやふやだったルールの線引きをし、きついだろうけど数字を意識させて動いてもらえるようにしました。

常に数字数字と言っていました。数字を意識するのは当たり前ですが、どうしても生々しいのと嫌な顔をするスタッフもいるので

あんまりやいやい言うのも嫌でしたが、これまでのやり方を変える、それを浸透させるってやっぱしんどいんですよ。

誤解してほしくないので何回も言いますけど、会社にお金が入ってこなければ置きたいワインだって置けないわけです。給料だって上がらないし休みも増えません。

しかも飲み物だけで150%とは結構な数字です。あの頃は常に電卓を片手に持って仕事していました。

地道に原価の計算をし、インポーターの担当に会ってワインの選定をし、スタッフへの知識の落とし込みをしたり料理とのペアリングを考えたりなどなど。

しっかりと計算し尽くしてスタッフやお客様からの信頼や、売り上げという数字で見える部分で信頼を得たときに初めて自分の色を出すことができます。

その時に3割の自分の好きなワインを使ってよりお客様の心をさらに掴みにいくのです。

そこまできて自分をようやく出せるわけです。

どの世界でもそうですが、最初は地道です。すごく地味で細かいことを繰り返し繰り返しすることでしか仕事においては評価されません。

きちんと結果を出さないといけません。それが仕事です。いくら地味だろうが仕事です。そこに誇りを持てる人はどんな仕事をしていても尊敬します。

もちろんプロセスも大事です。ですが一番わかりやすく人に伝わるのは**「結果」**です。

「売上」であり「利益」なんです。

一杯、一本の原価率、グラスワインの回転率や話題になっているワイン選定、ワイン講習の繰り返し。

もちろんソムリエ業務だけではありません、基本はホールのサービススタッフ。お客様に居心地の良い空間を提供するのは基本中の基本。

たまたま売り上げをあげることは誰にでもできますが、継続してやり続けることは非常に難しい。そして新規のお客様をさらに捕まえて…の繰り返し。

いつもいつも同じことを言って申し訳ないですが、重要なので繰り返します。

売り上げやお客様の入り(リピートや新規など)回転率、接待がこなせる。と会社として安定してきた時にようやく自分の色が出せます。

ですがその時にはきっとお店にくるお客様はお店のスタッフを認知している、自分たちもお客様を認知している。

という関係性が築けているはずです。そこでさらにお客様に合わせて出すことができたらもうその人たちはあなたのお店のファンでしょう。

そのお客様たちを最終的に自分のお客様にする。自分が他のお店に移っても通ってもらう。という感じでお客様を捕まえます。

感覚としては最低3ヶ月〜6ヶ月はみないと自由にすることは難しいのかなと思います。

逆を言うと3ヶ月以上あればそのお店のお客様、スタッフ、流れるお金の金額などがわかるようになっているはずです。いや、わかっていないといけないのです。

そのあとはひたすらPDCAを回す。回す。回す。の繰り返しです。

リストとの睨めっこだけではいけません。しっかりとスタッフへの知識の共有や深掘り、自分自身への勉強なども欠かせません。

その時々に合わせて色々なことを考え選定していかないとすぐに他のお店に抜かれてしまいます。

常に新しい楽しみや味、面白さをお客様に提案しなければいけません。

このブログを読んでいる方にはいつか独立して自分のお店を持ちたいとか

キャリアを積んで有名なレストランに行きたいという若手の方が多いので

少しでも勉強になれば嬉しいという想いや、普段は何気なく飲んでいる、そして見ているワインリストってこんなに頭使っているんだ。

意外と大変そうだねソムリエも。

とお店に行った時にお客様に思ってもらえたら嬉しいなという想いなどいろんな想いが絡み合ってできています。

ぜひぜひ色んなお店に行って、「あーそういえば司さんがなんかコラムで書いてたな〜」くらいの感じでお店のワインリストやドリンクリスト見てみてください。笑

スタッフさんと仲良くなっている方は「ソムリエさんの好きなワインはどれですか?」と聞いてみてください。

きっとより楽しい食事の時間が過ごせると思います。

では、今回はこの辺で。また来週、お楽しみに!

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やっぱりペアリングって素敵。

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