Journal / 日常
レストランでワインを頼むとき、 ソムリエが一番困ること。
おはようございます。渡邉司です。
さて、本日は僕の本丸?的な記事。レストランでワインを頼むときに困ること。です。
レストランでワインリストを渡された瞬間、少し緊張する人はきっと多いのではないでしょうか?
そもそもきちんとしたレストランであれば日本語なんて書いてないし、英語もあればフランス語もあるしイタリア語もある…。
ましてや知らない産地名、見慣れないブドウ品種、そして値段の幅。
「何を頼めばいいんだろう」と思いながら、なんとなく聞いたことのある名前を探したり、価格を上から下まで眺めたりする。
そのとき、ソムリエは何を考えているか。
今日はそれを正直に書こうと思う。ソムリエとして現場に立ってきた立場から、「こういうことをされると困る」「こうしてくれると、いいワインを提案できる」という話を。
① カルベネ・ソーヴィニヨンとシャンパン問題
「カルベネ・ソーヴィニヨンで何かいいものありますか?」
正確には「カベルネ・ソーヴィニヨン」なんだけど、ここは指摘しない。そんなことより、何を選ぶかの方が大事だから。
でも困るのは、その後だ。カルベネ・ソーヴィニヨンと言われればほとんどの人はボルドーワインなどのフルボディなワインを思い浮かべるだろうが、中には「カルベネのライトボディ頂戴」なんて言われることもある。びっくりするがマジであったのだ。
めちゃくちゃ深読みしたとしてもにっちもさっちも行かない。カルベネならまだしも、ライトボディなんて探しようがない。かといって「ブルゴーニュのワインですか?」なんて聞くこともできるかと言われるとそんなわけもない。
まあどうにかして解決したんだけど、結構ヒヤヒヤしたシーンベスト3に入るくらいテンパった話だ。
もうひとつよくあるのが、シャンパンを頼むときに「このスパークリングワインください」と言ってしまうケース。
シャンパンもスパークリングワインではあるのだが、値段が倍以上違うことなんてザラにある。しかもお店によってはグラスでスパークリングワインを2種類開けていることもあるので、なおさらどちらを選んでいるのかわからなくなる。
普通に考えれば「どちらになさいますか?」と聞けばいいのだが、場合によっては聞きにくい時もある。
しかも大体がスパークリングワインを飲む時というのは乾杯の場面が多いので、遅くなればなるほど「早く持ってこいよ」と言われる確率が多くなる。
ちなみに「どちらになさいますか?」と聞いてシャンパンじゃない方を指さして「こっちのシャンパンだよ」と言われたこともある。笑
そんな時は「はい、シャンパンです」といって出すのが丁度いいのだ。
ちなみにソムリエ界隈では有名な話なのだが、大手メゾンのシャンパーニュTaittinger(テタンジェ)というシャンパンを「タイティンガーください」と言われたソムリエがいる。という半ば都市伝説的な話もある。
フランス語だから読み方が難しいよね。で終わるんだけれど、いろんな場所でいろんな人から聞くから、当時は相当インパクトがあったのではないか。と推測する。笑
そんな知ったかぶりが続いてしまうとこちらが提案の糸口を見失ってしまう。
「詳しそうな人だな」と判断して話し方を変えると、失礼だが実はそうでもなかった、というケースが意外と多い。このギャップが大きければ大きいほどお互いにとって損になる。
別に知識を試したいわけじゃない。
ただ、知らないことを知ったかぶりでカバーしようとすると、こちらの「聞き取り」が狂ってしまう、という話だ。
とはいえ、男という生き物はちっちゃなプライドを胸に生きている生き物なので、見栄を張ってしまうのも「しゃーないな」と生暖かい目で見て欲しいものだ。
② ワインの知識は「飾り」じゃない
僕らソムリエにとって詳しいお客さんというのは嬉しい。ワインの話が深くできるし、提案の幅も広がる。
ただ、困るのは「同席している人を置いてけぼりにする人」だ。
たとえばこういう場面がある。ソムリエとの会話に熱が入るあまり、一緒にいるパートナーや友人がずっと黙って待っている状態になる。そうすると当然テーブル全体の雰囲気が静かにしぼんでいく。
これが普通のソムリエなら他の方もついていけるように場を回すのだが、これができないソムリエも多いのも事実。ソムリエは全員が主役になれるように場を回してあげるのも仕事の一つだ。
ちなみにたまにいて困るのが、大きな声でブラインドテイスティングをしているパターンだ。
偏見なしにワインと向き合い、そのワインの世界にダイブする。それはいい。むしろこちらも深く話したい。が、レストランでそれはあまり美しい姿とは言えない。ワインバーやビストロであっても…まあ良かったりするパターンはあるのだが、お店というのはお客様もスタッフも含めたライブ会場なのだ。
お客様が主役であるのは変わりないが、全員がそれなりに平等に楽しめるように場の流れを作るのはソムリエとサービスマンの仕事の一つである。
そんな中で「このワインはこうで」「このワインはああで」というのはいいが、声のトーンを気にして欲しいのが本音だ。
たまにいるカフェやファミレスで周りを気にせず話している人を見かけるが、他人は聞いていないようで他人の話を聞いているのだ。
楽しんでもらうのはもちろん嬉しいことなのだが、公共の場であることを認識してもらいたい。
知識は武器じゃなくて、テーブルを豊かにするためのものだと思っている。
それを忘れてしまうと、ワインそのものが空気を重くする道具になってしまう。
だから皆「ワインは難しい」とか言ってしまうのだ。
酒なんてうまけりゃなんでもええやろ。
③ 「生まれ年のワイン」の落とし穴
記念日や誕生日のディナーで、生まれた年のワインを選ぶのはとても素敵な発想だと思う。
気持ちがこもっているし、とても意味がある。
ただ、正直に言わせてほしい。
古いヴィンテージのワインは、コンディションの確認が非常に難しい。
どんな環境で保管されてきたか、輸送中の温度変化はなかったか、コルクの状態はどうか。きちんと飲めるかどうかを、ラベルの年号だけで完璧に判断することはできない。
そして残念ながら、ソムリエ側も「開けるまでわからない」ケースがほとんどである。
抜栓し、テイスティングをして初めて酸化が進みすぎていると気づくこともある。お客さんが楽しみにしていた一本が想像と全然違う味だったとき——その場の空気を立て直すのは、なかなかしんどい。
大きな規模のレストランであればもしかしたら同じワインが数本あるかもしれないが、小さなお店や常連の方にちょっと仕入れてよと言われて一本しかない場合のことを考えると、やはり扱うのには慎重にならなくてはいけないと思う。
古いワインを楽しみたいなら、やはりぜひ事前に相談してほしい。「◯◯年のものを探している」と伝えてもらえれば、コンディションの確認ができるものを選んだり、代わりになる選択肢を提案したりできる。
サプライズで当日ドンと出すより、一言相談してもらう方が、ずっといい時間になるし、その後のフォローもしやすいものだ。
④ ぶっちゃけ、これだけでいい。
ここまで「こういうのは困る」という話をしてきたけど、最後にシンプルなことを言いたい。
詳しくないなら正直に、「詳しくないから教えてください」と言えばいい。それだけでいい。
ソムリエという仕事は、お客さんのことを「ワインに詳しいかどうか」で評価したりしない。
むしろ正直に言ってもらえた方が、こちらはずっと動きやすい。「今日の料理に合わせてほしい」「予算はこのくらい」「重いのより軽いのが好き」「このエリアがいい」——そんな一言が、提案の精度を一気に上げてくれる。
カッコつけている人は、ソムリエにも、一緒にいる相手にも、なんとなく伝わってしまう。そしてそういう場は、少し居心地が悪い。
嫌なことを言うが、酒に酔うのはいいが、自分に酔うのは家で一人のときにしなさい。
ワインとは本来、場を楽しくするためにある。難しい顔をしながら選ぶものじゃない。
とりあえず飲むか。で気軽に開けてグビグビ飲む。ビールや他のお酒と一緒だ。「これは美味い」「これが好き」「この味は微妙だったなぁ」この時間を楽しむことができてこそ大人の嗜みってもんだ。
そして「よくわからないんですけど、美味しいのを選んでもらえますか?」これだけでいい。
そう言ってくれる人のテーブルが、一番いい時間になることが多い。少なくとも、僕の経験ではそうだ。
ワインのことで困ったら、気軽に声をかけてほしい。それがソムリエの仕事だから。
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