Journal / 日常
僕が芸能人のマネージャーだった時のお話。
僕の職務経歴書は、なかなかカオスだと思う。
始まりはパソコンのルーターの販売からスタートして、カフェ、バー、レストラン、ビストロ。
ジャンルで言えばフレンチもイタリアンも居酒屋もカラオケ店もあるし、会員制の俱楽部にいたことだってある。
そして飲食業以外の話をすると、芸能人のマネージャーをやっていた時期もあればマッサージのお店(怪しくないよ)でも働いた、商社みたいなところでも働いたので商品の輸出に関する書類を作ってお役所に出して何たらかんたらみたいな仕事もした。
キムタクほどではないが、僕も経歴だけで言えば多分このソムリエ業界でトップクラスに面白いことをしてきた方だと思う。
教師からソムリエやメーカーや技術者からシェフ、料理人からサービスに変わったなど、華麗なる転職を果たした人も多くいると思うが、僕ほどの経歴を持つソムリエは後にも先にも多分出てこないような気がする。
いや、多分ではなく、絶対そうだと思う。
マネージャーという仕事について、誤解されがちなこと。
「芸能人のマネージャーって、すごいですね」と言われることがある。
自分で言うのもアレですが、多分人生においてこんな仕事を経験できる確率はほんの数パーセントだと思うし、名前は上げないけど大体の人が聞いたらわかるくらいの人のそばで仕事ができるなんてもっと確率は少ないと思う。
それが幸運なのか不幸なのかはわからないけど、僕は相当幸運だったと思う。
こんなことを書くともしかしたら「他の芸能人と友達になれた」とか「いい思いしたんでしょ?」と思われるかもしれないが、実態はだいぶ違う。
多方面の要望や期待に応えるために奔走したし、雑誌の取材の同行やスケジュールの調整、ブログの構成、車での送迎、家の掃除、たまにはご飯の相手や話し相手にもなるし、朝から出社して終電すぎて帰るなんて日もたくさんあった。
華やかな世界の、決して表には出ないひどく地味な裏側にいる仕事だ。
唯一良かったのはテレビで出てくる楽屋弁当が食べれたくらいかな?笑
芸能人にもたくさん会えたけど、一度もサインをもらったことはない。仕事で会っているだけだし。今思えばとても残念なことをしたと思うけど。笑
でも今振り返れば、あの経験は完全にサービス業だったと思っている。
形は違っても、「目の前の人に最高の時間を届ける」という本質は変わらなかった。
なぜ辞めたのか。
じゃあどうして辞めたの?と聞かれると「めちゃくちゃ大変だったから」これに尽きる。
昨今の事情はわからないけど、芸能界というのはきれいなものばかりではない。
これもまあ経験か。みたいなこともたくさんあったし、もう2度と経験したくないこともたくさんあった。
もちろん詳しくは書かないし、多分他の人にも言ったことはないと思う。
相当優遇してもらったし、あのまま続けていたら…と思うこともあるけど、辞める後悔はなかった。
あの人が教えてくれたこと。
辞めたことに後悔はないけれど、あの人と出会えたことは心から感謝している。
今でも思い出すこともあるし、仕事のやり方や考え方、捉え方などの仕事の根幹はこの時の経験が生きている。
そしてその中でも特に刺さったというか今でも大事にしているマネージャー時代に言われたことがいくつかある。
意味なく面白いものもあるけど、それもまた良い思い出だ。
「先回りして仕事をしなさい。」
これは今でも僕の仕事の軸になっている。
お客様が何かを言う前に、次の一手を考える。
ソムリエの仕事でも、サービスの仕事でも、先回りできるかどうかが素人とプロの境界線の一つだと思っている。
先回りをすることで自分が楽になるし、ハプニングが起きても対処できる確率が高くなる。
「気遣いして仕事しなさい。」
気遣いは技術じゃなくて、意識と習慣だと僕は思う。
あの人の気遣いには相当驚かされた。「え、ここまでやるの?」と思うことがたくさんあったし、なおかつそれがごく自然に…まあたまにイヤらしい時もあったけど。笑
それでもその道のトップの人がここまで周囲に気を遣うことには本当に驚かされた。それに振り回されるこちらは大変だったけど、それが周り回って今の自分の中に生きているのだから人生は面白い。
人間は意識し続けることで、やがて習慣となり、無意識にできるようになる。
あの言葉をもらってから、僕はより一層「気遣い」に対して考えるようになった。
「早く、丁寧に、丁寧に、正確に、正確に、早くやりなさい。」
これが一番好きだ。笑
言われた時は「何言ってんだこいつ」と思ったけど。笑
「早く」と「丁寧に」は普通は相反するように聞こえる。でもあの言葉は、どちらかを犠牲にするなという意味ではなくて、両方を高いレベルで同時にやれ。という意味だと解釈している。
そしてプロとして仕事をすることとはそういうものだと、今でも思っている。
そして今僕が部下に対していうことも「早く、丁寧に、美しくやれ」だ。完全に影響を受けている。笑
「ミスると辛いもの食べさせるからね!!」
これは愛ある脅しだ。笑
僕は辛い物があまり得意ではなくて普段選択肢に入れることはないんだけど、ふとみんなでご飯を食べている時に苦手なんですと言ってしまったのが運の尽き。
それ以降何か仕事でミスをすると飛んでくるのがこの言葉だ。笑
本人は笑いながら言っているからからかっているのもわかるし、信頼関係があるからこそ言える言葉だと思っているので、こういう関係性を築けることが仕事の醍醐味だとも思う。
今でもたまに思い出して、笑うこともある。
連絡はできる。けど、しない。
あの人とは今でも連絡しようと思えばできる。連絡先が変わっていなければ。
LINEには出てくるから多分番号とか変わっていないんだろうけど、絶対に僕からは連絡は取らないつもり。
いつかこの記事が届いたとき、「ちゃんとやってるじゃん」と思ってもらえたらそれで十分だと思っているし、もしどこかでばったり会ったときに「早く、丁寧に、丁寧に、正確に、正確に、頑張ってます。」と言ってやろうと思う。笑
サービス業15年、現場を離れなかった理由。
飲食業もマネージャーも、突き詰めれば同じことをやっているとここ最近思うようになってきた。
目の前の人の期待に応えること。先回りして、気遣いして、早く、丁寧に、正確に。
あの人に教わったことは、ソムリエの教本には載っていない。でも現場では毎日使っている。
そんなこんなで気がつけば、サービス業一筋15年以上。現場から離れたことは、一度もない。