Journal / 日常
プロと素人の違いは、ファン以外からお金が取れるかどうかだと思う。
こんにちは、渡邉司です。春うららいかがお過ごしでしょうか。
今日はですね、敢えて挑発的なタイトルにしてみました。一応多数の目に触れる可能性のあるSNSやブログを投稿するにあたっていくつか心がけていることがあるのですが、その中の一つが
炎上するかしないか
だったんですね。炎上商法的なものもある意味アリだと思うのですが、燃えたものは鎮火するものだと思っているのであまり燃えて欲しくないのが本音なところ。
でもそうするとせっかく個人のホームページを作って発信をしているのに勿体無いというか意味がないような気もしていたのも事実。
と、いうことで今回のブログは目指せ炎上…とまでは言いませんが、少なからず今までの投稿よりも賛否(どっちかというと否の方が多いはず)が出てくるのではないかな。と思いながら書いている次第です。
これまでの投稿もそうですが、僕が書いていることは基本持論なので、異論は認めます。でも僕はこれが正しい姿だと思っている。ということを書きたいと思います。
タイトルからも分かる通りプロと素人の違いは、自分のファン以外からお金が取れるかどうかだ。
ファンはすでにお金を払う準備ができている
例えば好きなアーティストのライブに行く。好きな料理人のレストランに通う。好きなソムリエがいる店は足を運ぶ。
これは当たり前の話です。僕だって乃木坂46のライブに行けるなら大枚叩いたって行きます。「超絶可愛い!かっきー!!!」って言いたいです。
ファンというのは、すでにあなたに価値を感じている人間のことなので、彼らはあなたが何をしてもある程度は満足してくれる。
極端な話、少しくらい失敗しても「まあ、あの人だから」と許してくれる。信頼関係の元成り立つものですが、それがファン。
でも現場は、そんな甘い場所ではありません。
レストランに来るお客様の多くはシェフの料理を食べに、シェフが好きで来ている。
レストランという非日常的な空間に来ている。記念日だから来ている。接待で来ている。
ミシュランで星を取っているから来ている、食べログ、Googleなどの評価が高いから来ている。
正直なところ、僕のことなんてどうでもいいという人がほとんどです。
むしろ9割くらいの初見のお客様は僕なんか見てないわけです。
それが現実だし、それはそれで構いません。
問題は、そういう人たちに対して何ができるか。そこにプロと素人の差が出る。ということです。
あの夜の若い夫婦の話
少し前のことです。
若い男女が来店されました。多分夫婦だろうなというのは雰囲気でわかったのですが、このお店自体への来店は初めて。
僕のことは当然知りません。お二人の目当ては料理とその空間で、僕はただのサービスマンAです。
ただ、そのご夫婦にはちょっとした楽しみ方がありました。
コースで出てくるお皿…その一枚一枚がどこのブランドのものか、どんな作家のものかを確認しながら食事を楽しんでいたんです。
料理が運ばれるたびに、さりげなく裏側を確認したり、テーブルの上でそっと眺めたり。
「これどこのお皿かな?」「すごい良いよね」なんて話は聞こえていたので、「これはどこどこのお皿ですよ」なんて会話を交えながら、微笑ましいな、と思いながらサービスをしていました。
そしてあるタイミングで、奥様がぽつりと言ったんです。
「さっきのお皿、見るの忘れちゃったね。」さっきのお皿とはメインに使っていたとても高価なお皿です。
旦那様も「あ、ほんとだ。でもさっきお兄さんが言っていたところのお皿だよきっと」と話していました。
僕はその会話を聞いていました。でもすぐに「同じお皿ですよ」と動きませんでした。
なぜなら料理の流れや他のテーブルのお客様とのタイミングがあるし、何よりお二人の会話の邪魔をしてはいけない。
少し時間をおいて、自然な流れができたタイミングで行こう。とタイミングを測っていました。
そしてちょうど良いタイミングの時にそのお皿を持ってテーブルに戻りました。
「こちらが先ほどのお皿です。」
それだけです。特に長い説明もしていません。
ただそのお皿を、お二人の前に置いただけです。
すると奥様の顔がぱっと明るくなって、「わあ、ありがとうございます!」と言ってくれました。
旦那様も笑顔になって、お二人でそのお皿をしばらく眺めていて楽しんでいました。
その瞬間、僕はサービスマンAではなくなりました。
食事が終わってコーヒーと紅茶を持って行った時に「あの、さっきみたいなサービスができるのはどうしてなんですか?」と聞かれました。「どこか学校とかで習ったりするのですか?」と。
「これはねぇセンスです。笑」と僕は言ってその場を去りました。
まあそのあと色々話すのですが、その内容は僕と彼らだけの秘密です。
プロは求められる前に動くのではない
よく「プロは先読みして動く」と言われます。個人的には半分正しくて、半分間違いだと思っています。
先読みして動くだけならそれは単なる作業の効率化です。
マニュアルを完璧に覚えた素人でもできる。まあそれも大事なんですけど。
プロ…というか一流のサービスマンが本当にやっていることは、気づいて、考えて、タイミングを選ぶことだと思います。
あの夫婦の会話を聞いたとき、僕はすぐに動くこともできました。でもそれをしなかった。お二人の時間の流れを壊したくなかったから。料理のリズムを崩したくなかったから。
気づくことと、動くことの間に、判断がある。その判断の質がプロと素人を分けると思います。
素人は気づかない。あるいは気づいても動かない。あるいは気づいて、考えずにすぐ動く。
プロは気づいて、考えて、最適なタイミングで動く。
敢えて動かない時もありますけどね。
そしてそれらの動きは、お客様には「なんかよかった」としか残らない。
それでいい。それが黒子の仕事だから。
それがプロだから。
ファンを作ろうとしない
僕はファンを作ろうとして仕事をしていません。
そりゃあファンが多い方がいいに決まっています。だって仕事するの楽だもん。
冒頭で書きましたけど「許してもらえる確率が高くなる」ことの方が多いです。そりゃあ楽ですわ。
でも、それはちょっと違いますし、プロがすることではありません。
結果的に許してもらうこともありましたが、後で振り返った時に僕は自己嫌悪に陥ります。
だって僕はプロだから。
僕がいる現場の営業は一回限りではありません。
明日、明後日、1週間後、1ヶ月後、1年後とずっと続いていきます。
とはいえ一回限りのイベントであればなおさらです。
その一夜に全てを懸けるからこそ、プロとしての判断が試される。
僕らは常に目の前の一人に集中する。その人が何を求めているか、何を感じているか、何を見落としているか、それだけを考えて動く。
過不足はあってはいけません。やりすぎてもいけませんし、足りなくてもいけません。
全力を尽くした結果としてまた来てくれたとしても、その人がファンになってくれたとは僕は思いません。
いや、一生この人は僕のファンだ。と思ってはいけないような気がします。
もちろん僕のことを好いてくれて来てくれるお客様もいます。
そういうお客様に生かされているからこそ、結果を出さなくてはいけないとも思っています。
もしかしたらこの覚悟の違いもプロと素人の差かもしれません。
ファン以外の人間…つまり自分に何の期待も持っていない人間に対して、何ができるか。
初めて来たお客様。興味のないお客様。正直、今日は来たくなかったお客様。
そういう人たちの記憶に、何かを残せるかどうか。彼らに対してどんなインパクトを残せるか。
それがプロの仕事だと、僕は思っています。