URLARのセミナーを受けて

Journal / 日常

URLARのセミナーを受けて

2026.06.20  /  渡邉司(Tsukasa Watanabe)

週に一度は休肝日を設定しました。おはようございます。渡邉司です。
いやーやっぱりね、35歳ともなると酒の抜けが遅い遅い。20代は深夜…朝方まで飲んでそのまま出勤!
なんてこともできたのですが、さすがにね、少しずつ抜けが遅くなっているのを実感しています。
そして長く太く現場で活躍するには休肝日も必要だよね。と今更ながら思いまして、しっかりと週に一日はお酒を飲まない日を作りました。ノンアルビールは飲むけども。笑
さて、そんな私は変わらず日々現場でヒーヒーしています。とはいえ試飲会に行く時間が取れるのが嬉しいところ。
そんな中で先日はあるセミナーを受けてきました。その様子を書いていこうと思います。

少ない人数の贅沢な時間

先日ニュージーランドでワインを造っている西酒造のセミナーを受けてきました。

知っている方もいるかと思いますが、こちらのワイナリーの大元は焼酎「富乃宝山」で知られる西酒造。
そんな西酒造産のオフィスで開かれたセミナーの参加者は8人。午前と午後に分かれてのセミナーだったのですが、僕は午前の部へ。
ちなみに会場となった西酒造さんのオフィスですが、社長室で受けてきました。
というのも今回のセミナーの担当の小山さんが「実はここは社長室なんですよね〜」としれっと言っていたので、これは書いたほうがいいのかなと思い書いています。笑

この日のワインは全部で5種類

ちなみに社長室にはアーラーを始め、富乃宝山、日本酒の「天賦」、そして2019年に開設された御岳蒸留所のウイスキー「御岳」もありました。
小山さんと社長の西社長は日々こちらのでワインの味わいなどについて議論しているのだとか。
個人的には日本と現地では気温や湿度も違うから味わいなどの感じ方にズレが出るんじゃないかしら…と気になったんですが、まあそんな細かいことは置いておいて。他社の社長室に入ることはほとんどないので、とても新鮮でしたね。

さて、小山さん小山さんと出していますが、実はこの小山浩平さんはこちらのワイナリー「URLAR」の栽培と醸造の責任者サラリーマン時代に赴任先のロンドンでワインに目覚めて著名な大学を首席で卒業なんていう頭脳の持ち主。
そんな人の話を聞いていて思ったのが、この人は専門用語をほとんど使わないんです。
多少は使うのですが、ソムリエ教本に載っていることと、僕らを始めプロが集まっているのですから、今更専門用語がわからないなんてことはありません。
それでも質問をしていく中で難しい話をするときは「ちょっと難しい用語になりますが」と前置きをしつつ、わかりやすいように噛み砕いて話してくれる姿がとても印象的でした。
本当に頭が良い人は難しい話を難しくなく話してくれますから、その一端を感じることができました。あ、ちなみにこの方、東京大学を卒業しております。どうりで。

① 砕いて、砕いて、話す

ワインのセミナーというのは、往々にして難しい言葉が飛び交います。
テロワール、マセラシオン、バトナージュ、デゴルジュマンなどなど——僕らのように生業にしている人間には当たり前でも、初めて聞く人には呪文のように聞こえますよね。
でも小山さんはそれをせず、難しい概念を、できるだけ平易な言葉に置き換えて話していました。
「こういうことです」「つまりこういう状態です」と、聞いている人が置いていかれないように、丁寧に、でも淀みなく話し続ける。8人という少人数の場だったからこそ、その丁寧さがより伝わってきた気がします。
少人数だったから質問もしやすいですしね。そこもとても良かった。

② 哲学——衛生、少量、食中

そんな話の中で印象に残ったことがいくつかありまして、まずは衛生管理への徹底したこだわり。
ワインに関わらず酒造りや物造りにおいて衛生管理は基本中の基本だと思っていますが、小山さんの話を聞いているとそれが「基本だからやる」ではなく「それが全てだ」というくらいの温度感で語られていたのが印象的でした。
清潔な環境なしに、良いワインは生まれない。当たり前のことを、当たり前以上にやる。
これまで何度か飲んだURLARのワインはとてもピュアで綺麗、そして「きちんとした」自然な造りのワイン、自然派じゃなくて自然なワインという表現が合うような気がします。

次に、量を造らないということ。
URLARのワインはそこまで多くの量を造らない。品質の良いものを無理しない量仕込む。食事に添えられる、美味い酒を造る。だそうです。
それはワインだけでなく焼酎の富乃宝山も同じで、食事と合わせることができる食中酒としての完成度も高くなくてはいけないそうです。素晴らしすぎる。

そして、資材へのこだわり。
ブドウはもちろん、樽、コルク、そして環境への配慮。小山さん曰く、今世界的に不足しているのが「ブドウ、樽、そしてコルク」だそうです。
URLARのワインのほとんどがスクリューキャップを採用しているのもその考え方の延長線上にあるのと、コルクには品質のばらつきがある。そしてブショネのリスクもある。
スクリューキャップはそのリスクを排除し、ワインを安定した状態でお客さんに届けるための選択で、「高級ワインはコルクであるべき」という固定観念を、静かに、でもはっきりと手放している。とはいえ、コルクのワインもあるんですけどねURLARには。
その理由も聞いたのですが、「あぁ、なるほど」と感じる反面、「我々お客側の質も下がっているな」とちょっとした危機感を覚えました。
ちなみに…いや、これはここでは話さないでおこうかな。質問をした人たちだけの秘密にしておきましょうかね。

③ あのピノノワールは、化ける

セミナーでは5種類のワインをテイスティングしました。4種類がピノ・ノワールで一つがメルローとカベルネ・フランだったかな?
正直に言うと、全部が全部「これだ」と思えるものがなかったのが正直なところ。もちろん美味しいんですけど、まだ飲むにはちょっと早いかな〜という印象。
それだけポテンシャルがあるということなんですけど、時間が必要ですね。
とはいえ今僕はレストランという業態にいるからそう思うのであって、ビストロやワインバーにいたらまた違う印象になったかと思います。それだったら多分あれは使うかな?みたいな感じ。
そんな中でも一本はっきりと「これは違う」と感じたものもありました。当然まだ若いのですが、多分10年以上熟成したら大化けするんじゃないかなと思いました。
そしてURLARにはHeaven’s Sellectionというフラッグシップがあります。良い年のごく僅かな樽数(4樽)しか仕込まない極上のキュヴェです。今回それは出なかったのですが、以前参加したときに出てきた時の印象と今回飲んだ別なキュヴェと比べると「化ける可能性があるな」と感じました。
同じ品種、同じ造り手、でも畑の区画が違う。その差が朧げな記憶の中でもグラスの中にくっきりと現れていた気がします。僕の記憶が間違っていなければ。笑
区画の違いがここまでワインに影響を与えるということ、そしてその違いをきちんと見せてくれる造り手の力量。この先が非常に楽しみなワインかなと思いました。

④ 造り手の顔が見えるということ

セミナーが終わって、帰り道に考えていたことがあります。
ワインを飲むとき、造り手のことを考えることはあまりないかもしれないなと。
個人的にお付き合いのある方の造っているワインを飲むときは当然その人の顔が浮かぶのですが、どうしてもワインは産地、品種、ヴィンテージ——そういった情報で選ぶことが多いなと。
でもこの日みたいに、実際に造っている人の話を直接聞いてからワインを飲むと、まったく違う体験になる。いやまあそうなんですけどね。
試飲会でも生産者が来日している時もありますが、僕はなるべく質問をしようと心がけています。
もしかしたら「こんな初歩的なことを聞くのはどうかな?」と思うような質問が浮かぶこともあるのですが、やはり直接造っている。
今回の小山さんにはどんなことを考えながらブドウを育てているか。なぜスクリューキャップを選んでいるか。どういう食事に合わせてほしいと思っているか。そんなことを僕始め参加した方が質問をしているとても有意義な会だったと思います。
せっかくの場なのに質問しない人もいますからね。
これからURLARのワインが日本でどのように広まっていくか、新しいキュヴェやフラッグシップのHeaven’s Sellectionがどうなっていくのか、個人的にとても楽しみです。
あのピノ・ノワールが、いつか世界を驚かせる日を想像しながら。

では、また。

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