2022年2月改訂版
どうもサービスマン渡邉司です。
毎回毎回「知ってるよ」と言われそうですが、言わせてください。
このブログを読んでくれている方は知っているかもしれませんが、僕が書いた記事の中でも代表的な記事って
この靴についての記事だと思っているんです。やはり男性からの支持が多いんですよね。革靴のことですし。
一応毎月どの記事が一番のアクセスを稼いでいるのか見るんですけど、平均的に一番アクセスしてもらっているのがこの高い靴を履きなさい。なんです。もうずば抜けてアクセスが多い。
「靴はいいものを履きなさい」
という類の検索をするとグーグル先生調べで現在も第3位を誇るアクセスがあるらしいです。誇らしいですこの記事。
全然飲食のことやないやんけ。と思いつつ、もしかしたら活路はこっち方面なのかしら?と最近考えることが増えました。
敏感力や、不器用のススメもそう。
より内面のことを深掘りする記事は仕事関係なくどんな人でも引っかかる要素があるみたいですね。
元々は半分趣味ブログ的な感じで考えていたんですね、備忘録的な。
それがビジネスキャリアとかワインとか生き方とか考え方とか様々なことを書いているうちに、今回のワインリストについて書いたことによって
Podcastへの出演が決まり、勢いで自分の番組も作ったわけです。非常に嬉しく、そしてもっと頑張らなくては思う次第でございます。
贅沢を言うなら収益化…できればいいなぁなんて思っています。不労所得ほしい。
そして堂々と本名を晒すことを決意したこともあって、より身の引き締まる思いと言いますか変なこと書けないよなって思います。
とか言いつつ自分のことを飲兵衛でアル中なんて言ってますから、思いっきり変なこと書いてますけどね。まあそれは個人ブログだから多めに見てもらって。
改めてこの
渡邉司的ワインリストの作り方を改訂しようじゃないか。
と思ったわけです。
先ほども書きましたが、これがきっかけでPodcastへの出演や自分のPodcastも始めることになった非常に重要なこの記事。
と言っても特別なことはしていません。とりあえず思ったことを書いただけなのでテクニックも何もあったもんじゃありません。
むしろこの記事を最初に出した時はばーーーっと書いただけですからね(今もそうですが)
普段はサービスマンサービスマンと言っておきながら、やはり一般知名度で考えると
ソムリエというワードの方が広いネットの海原でも検索ワードで引っかかりやすいのでバンバン使っています。
さて、そんなワインリストへの考え方ですが特にそんな優れた作り方というのはないのかなと実は思っていて
もちろん理由はこのあと書いていきますけど、すごく技術がないとできないとかそんなことはなくてぶっちゃけると考えれば誰でもできるんです。
それはワインリストだけでなくドリンクメニューも基本的には同じ考えになるのですが。
ある意味僕のこだわりというか決めていることがありまして
僕はですね
自分が好きなワインはほぼ使いません。
これが答えです。
いや、ほんとに。
「ほぼ」というのがミソなんですけどね。
もちろんこれにはきちんと理由があります。
さて、現在飲食業に従事している人たち(主にワインに携わる人)は
自分がお店のワインリストを作ることを想像してみてください。
従事していない人でも、例えばあるプロジェクトのリーダーになったと思って考えてみてください。
「○○さんワインリスト作ってください」「〇〇さん新しいプロジェクトはあなたに任せます」
と言われたらあなたはどんなワイン(プロジェクトの計画)を選びますか?
ここから先はワインの話で進めますが。
フランス、イタリア、スペイン、カリフォルニア、南アフリカ、日本などなどたくさんの国があって
ボルドー、ブルゴーニュ、トスカーナなど有名な場所のワインを多くしよう。
とか
グラスワインで常にシャンパーニュを用意しよう。
とか
グラスワインで10種類以上開ける。
とか
色々夢が膨らむわけです。僕もそうです。やりたいことはたくさんあります。
例えば昔はロゼワインだけのペアリングをしたこともありました。
オレンジワインを常に5種類用意することもありました。
普通に考えたらおかしなことです。多分ほとんどの人が考えないでしょう。
というかそれだけロゼワインとかオレンジワインを開けてどうするのよ。
みたいな話にもなるのですが、それはきちんとブランディングしてありますのでご安心を。
ですが、どんな青写真を描こうとも、きちんとワインを売ることができないとロス(廃棄)が増えてしまいます。
ロスが増える=お金を捨てることなので、いきなりやりたいことを全てしてしまうとお店が崩壊しますのでやめましょう。
崩壊してきたお店はたくさん知っています。
とは言うものの、やはり自分の色を出したいと思うのが人間の性。わかります。色々とやりたいことや妄想が膨らむわけです。
任してもらうと言うことは期待の表れでもありますからね。
そりゃあ気合も入ります。当然です。
ですが、僕個人としては様々なタイプのお店でリストを作った経験から言うと
自分の好みを3割
自分のお店やその周辺のお店とのバランス
そして来店を想定するお客様のレベルに合わせて7割
という比率が良いリストだと思っています。
ここで言う良いリストというのはお客様を喜ばせるリストではありません。
お客様を喜ばせるのは当然です。それは大前提です。
僕の思う良いリストというのは
きちんと会社にお金を落とせるリスト
といえばわかりやすいでしょうか?
大事なんですよ。お金が落とせるリスト。
ソムリエもサービスマンも頭で算盤がハジけるようにならないといけません。
一杯、または一本から得ることのできる売り上げと原価、消費税込みなのか抜きなのか。サービス料は含まれるのか。
もっと大切なのはお客様に値段以上の価値を与えられているのかどうか。
そして料理と合っているか。生産者がどんな思いで造っているのか。
過去にいたお店ですが、レベルがどんどん落ちているのに意固地になって変えれないお店もたくさんありました。お店というかそこのソムリエですかね。
ワインのことが詳しいのはソムリエとして当然のこと。ですがソムリエ業務以外に必要なことの方が多いんです。店舗の運営というものは。
細かいことですがきちんと飲料の数字が見れて、利益がどれだけ出るのかを把握することもそうだし、しっかりとスタッフへの教育もする。
もちろん他の飲料の管理や、しっかりとお客様をお店に捕まえるということができていないと、いくら「任せるよ」と言われても自由にやらせてもらえません。
ソムリエである前にサービスマン、お店のスタッフ、会社組織の一員ですからね。
組織にお金を落とす。大事です。
そんな僕が銀座や原宿、青山などのいわゆるお金を持っている人が集まりやすいところでリストを作るときに心がけていたのは
ワイナリーのブランドや世間での評価、認知度などを中心にリスト(オーパスワンとか5大シャトーとか有名どころ)を作っていました。
もちろん有名だから良い悪いではなくお客様自身が喜ぶリストを作ることが第一。自然派のワインが苦手な人にそのワインをオススメしても意味がありません。
これでもし僕が有名なソムリエならもしかしたら違うアプローチができたかもしれません。というかできたでしょう。
「人」に会いに行くのが一つの楽しみというのは非常に大きな強みです。と言うかこれが全てです。
ですが僕は有名なソムリエでもなんでもないので、いきなり司さんがいうなら飲んでみましょう。
司さんに会いに行こうなんて人がまずいないのでね。
地道な営業活動をしていればファンは後々増えます。そうやって自分のファンが増えてくれればいいんです。千里の道も一歩から。
やり方を間違えたら即落ちますけどね。初心忘るべからず。僕も気をつけなければ。
話は戻りまして、土地(銀座とか西麻布とか青山とか)でお金が取れる場所以外のところではコスパの良いもの。
特にプロの世界では有名だけど一般の方にはあまり知られていないリストを中心に作っています。
もちろん初期の立ち上げから作るとなると周辺のお店にご飯を食べに行ってチェックできるので値段とか諸々決めやすく立ち上げと言うのは意外と作りやすくて良いのですが
他のお店に移り、前にいたソムリエから引き継ぐとまあすごいんですよ。色々すごい。
どうしてフランス料理のお店でイタリアワインの方が多いの?なんてこともありましたし
逆も然りでイタリア料理のお店なのにフランスワインばっかりとかもありましたし。
とにかく高いものしか置いていないお店とかもありました。こんなの誰が飲むんや。とか、棚卸しの表にも載っていないぞこれ…みたいな。
きっとボルドーが好きなんだな。とか
あーバローロ好きなのね〜。とか
おいおいどうしてこんなにスペインワインばかりやねん!とか
見ててすごく面白いんですよね〜その時その時のソムリエ達の色が出てて。
整理整頓するのはめんどくさいですが、ソムリエの頭の中が見えるようで非常に興味深い。
あと大変だったのが大きなお店ほどいろんな会社との絡みが大変でなかなか思うように作ることはできません。
この会社のワインを使わなきゃいけないとか、お店がオープンした時からの付き合いとか、シェフと付き合いが長いからとかとか。
が、そこは腕の見せ所。先にいるスタッフに話を聞いたり、以前のリストを見せてもらったりとまずは情報収集。
さあ自分好みにリストを作るぞ!と意気込み自分色に染めたいのもわかります。
ですが一旦ストップ!ちょっと待ってください。
わからなくもないのですが、まずは自分の色は隠しておきましょう。まずはね。
先ほども書いた通りどうしてもソムリエが好きなものが多めになってしまうんですよね。
ボルドーが好きならボルドーが中心、イタリアが好きならイタリアが中心。
新世界が好きなら新世界…。いや、いいんですよ。
そりゃソムリエになってワインリスト作っていいよって言われたら自分の世界観を反映させたいのは良くわかります。
僕は日本ワインだけでペアリングやってましたから。シャンパンだけのペアリングとかね。
そのためにたくさん自分の時間とお金を使って勉強するわけです。ソムリエ試験だって受験料はばかになりません。
が、ここに落とし穴があります。辛辣なことを言いますが
お客様はワインリストに興味があってもソムリエには基本興味がないんですよね。
悲しいですけどこれが事実です。先ほども書きましたが、有名なソムリエでしたら話は変わりますけどね。
ワインリストに興味があって、作った人には興味ないんですよね。
継続して働き、お客様がお店に通い続けるうちにそのスタッフの顔を覚えたりして興味を持ってもらうのです。
まずはお店に定着させる。そしてしっかりと水物で利益を上げれる仕組みを作るのが一番大切だと個人的には思っています。
手前味噌ですが、僕はとあるレストランにいた時、飲料の売り上げを前年比150%を半年間続けました。
そのまま他のお店に移るまでずっと150%付近を続けていたので、これは大きな自信になりました。
半年間することも結構大変です。結構というかめちゃくちゃ大変です。
ですが継続することはもっと大変で、まだ若いスタッフにも、僕より在籍の長いスタッフにもあやふやだったルールの線引きをし、きついだろうけど数字を意識させて動いてもらえるようにしました。
常に数字数字と言っていました。数字を意識するのは当たり前ですが、どうしても生々しいのと嫌な顔をするスタッフもいるので
あんまりやいやい言うのも嫌でしたが、これまでのやり方を変える、それを浸透させるってやっぱしんどいんですよ。
誤解してほしくないので何回も言いますけど、会社にお金が入ってこなければ置きたいワインだって置けないわけです。給料だって上がらないし休みも増えません。
しかも飲み物だけで150%とは結構な数字です。あの頃は常に電卓を片手に持って仕事していました。
地道に原価の計算をし、インポーターの担当に会ってワインの選定をし、スタッフへの知識の落とし込みをしたり料理とのペアリングを考えたりなどなど。
しっかりと計算し尽くしてスタッフやお客様からの信頼や、売り上げという数字で見える部分で信頼を得たときに初めて自分の色を出すことができます。
その時に3割の自分の好きなワインを使ってよりお客様の心をさらに掴みにいくのです。
そこまできて自分をようやく出せるわけです。
どの世界でもそうですが、最初は地道です。すごく地味で細かいことを繰り返し繰り返しすることでしか仕事においては評価されません。
きちんと結果を出さないといけません。それが仕事です。いくら地味だろうが仕事です。そこに誇りを持てる人はどんな仕事をしていても尊敬します。
もちろんプロセスも大事です。ですが一番わかりやすく人に伝わるのは「結果」です。
「売上」であり「利益」なんです。
一杯、一本の原価率、グラスワインの回転率や話題になっているワイン選定、ワイン講習の繰り返し。
もちろんソムリエ業務だけではありません、基本はホールのサービススタッフ。お客様に居心地の良い空間を提供するのは基本中の基本。
たまたま売り上げをあげることは誰にでもできますが、継続してやり続けることは非常に難しい。そして新規のお客様をさらに捕まえて…の繰り返し。
いつもいつも同じことを言って申し訳ないですが、重要なので繰り返します。
売り上げやお客様の入り(リピートや新規など)回転率、接待がこなせる。と会社として安定してきた時にようやく自分の色が出せます。
ですがその時にはきっとお店にくるお客様はお店のスタッフを認知している、自分たちもお客様を認知している。
という関係性が築けているはずです。そこでさらにお客様に合わせて出すことができたらもうその人たちはあなたのお店のファンでしょう。
そのお客様たちを最終的に自分のお客様にする。自分が他のお店に移っても通ってもらう。という感じでお客様を捕まえます。
感覚としては最低3ヶ月〜6ヶ月はみないと自由にすることは難しいのかなと思います。
逆を言うと3ヶ月以上あればそのお店のお客様、スタッフ、流れるお金の金額などがわかるようになっているはずです。いや、わかっていないといけないのです。
そのあとはひたすらPDCAを回す。回す。回す。の繰り返しです。
リストとの睨めっこだけではいけません。しっかりとスタッフへの知識の共有や深掘り、自分自身への勉強なども欠かせません。
その時々に合わせて色々なことを考え選定していかないとすぐに他のお店に抜かれてしまいます。
常に新しい楽しみや味、面白さをお客様に提案しなければいけません。
このブログを読んでいる方にはいつか独立して自分のお店を持ちたいとか
キャリアを積んで有名なレストランに行きたいという若手の方が多いので
少しでも勉強になれば嬉しいという想いや、普段は何気なく飲んでいる、そして見ているワインリストってこんなに頭使っているんだ。
意外と大変そうだねソムリエも。
とお店に行った時にお客様に思ってもらえたら嬉しいなという想いなどいろんな想いが絡み合ってできています。
ぜひぜひ色んなお店に行って、「あーそういえば司さんがなんかコラムで書いてたな〜」くらいの感じでお店のワインリストやドリンクリスト見てみてください。笑
スタッフさんと仲良くなっている方は「ソムリエさんの好きなワインはどれですか?」と聞いてみてください。
きっとより楽しい食事の時間が過ごせると思います。
では、今回はこの辺で。また来週、お楽しみに!
やっぱりペアリングって素敵。